トルコ危機が叫ばれて久しい昨今になりますが、今後もこのようなことが起こると思います。
そこで今回は、トルコ円がどこまで下がるのかの非常に簡単な話をしていき、そして金融関係者が考える今回のトルコ安の要因を少し難しい話になりますがお話しをしていきたいと思います。
半値、八掛け、五割引
みなさんは日本の商売で使うこの格言みたいなものをご存知でしょうか?
昔から暴落の基準にはこの言葉が適用され、
半値、八掛け、五割引
というような基準で下がってきます。
昔は商売でこの用語、格言は使われていたのですが、今ではすっかり相場用語になっています。
しかし、マーケットの世界でもこの格言を知らない人が非常に多いのが悲しいですね。
この使い方を先ず、考えていきましょう。
では、さっそく、トルコ円でみていきましょう。
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上記のグラフはトルコ円の月間足2007年からになります。
この2007年の年に何が起こっているかといえば、みなさんがご存知のリーマンショックになります。
なぜ、このリーマンショックということを確認するかといえば、かんたんな話であって、このリーマンショックというのは象徴的なものの崩壊なのです。
たいていの方は、アメリカが借金でクビが廻らなくて倒産しそうになったというのがリーマンショックだというと思います。
たしかにその通りなのですが、裏の意味を考えてほしいのです。
私たちは通貨、FXに投資をしているのですからアメリカのお金はドルになります。
アメリカドルが倒産しそうということはイコールの関係としてドル安です。
通貨というのは相対的な価値基準になりますのでドルが弱い替わりに何の通貨が強かったのか、ということを考えます。
少し、アメリカの話をしておきましょう。
このリーマンショックの前のアメリカの不景気というのは、ドットコムバブルや9.11の世界同時テロになります。
だったら、その前にアメリカは絶好調だったのかといえば、かつて現在のトランプ大統領も保有していたプラザホテルで1985年にプラザ合意があったのです。
プラザ合意とはドルの引き下げを話し合った会議だったのですから、そのアメリカには、ときどきに好不況はあったのですが、全体的に不景気だったのです。
そして、さらに昔の話をすれば1971年に固定為替相場制度が崩壊し、現在、私たちがなじんでいる、変動為替相場レートに移行をしたのです。
結局、ドルと円のレートが1970年まで固定レート360円だったのですが、このドル高の制度を当時のニクソン大統領がこの固定レートをアメリカは維持できないと、放棄したのです。
これが、ニクソンショックになります。
つまりアメリカの不景気というのは1970年代から始まっており、その最悪期を脱したのが、リーマンショックだったのです。
つまり1970年から日本のバブルがあったり、中国が躍進したりしたのは、相対的にアメリカが大して元気がなかったからに他ならないのです。
要するにそれまではアメリカに投資をしておけば、年間で15パーセントの金利もついた時代があったのですが、それができなくなったのです。
その投資マネーは日本や中国に行き、そして2000年代にはみなさんご存知のBRICSという新興国に資金が流れたのです。
その中に当然トルコも含まれており、アメリカが倒産しそうになったときにトルコの新興国バブルが崩壊して、現在に至っているのです。
つまりトルコはリーマンショックの後始末を今でもしているのです。
10年以上経過しているのに、まだ、そんなことをやっているの?と思うかもしれません。
しかしアメリカもユーロもいまだにリーマンショックからは完全に立ち直っておらず、現在はリーマンショック以降、非正常であった金融システムを正常化しているプロセスの途中なのです。
さて、話を本題に戻しましょう。
トルコ円は2007年に100円近い値段を示現しました。
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ここで半値、八掛け、五割引の登場になるのですが、正確には100円ではないのですが、ここでは便宜上、100円にしておきましょう。
そうなると、半値は50円です。
わかりやすいように赤い横線を引いてあります。
そして八掛けですから50円×0.8=40円にも赤線を。
そして、半値は20円にも赤い線を引きます。
いかがでしょうか?
日本の古来ゆかしい、半値、八掛け、五割引の格言が見事に示現されています。
この格言は暴落しても8割引き程度だ、ということを示しており、トルコ円の安値は20円くらいだということは理解できましたでしょうか?
具体例
たとえば、さきほどの例でいけば、ドル円の高値は固定レートであった360円になります。
そこに半値、八掛け、五割引を計算していきましょう。
半値 | 180円 |
---|---|
八掛け | 144円 |
五割引 | 72円 |
144円は、小渕首相のときの金融緩和によって示現された値段ですし、また72円はドル円の最高値が東日本震災後に示現した75円です。
ほぼこの通りになっていますね。
要するになんでこうなるかは、私もよくわからないのですが、直近の高値から半値、八掛け、五割引のように順繰りに下がってきた相場は、高値から8割引きの値段でおちつく可能性が高いのです。
今月のトルコ円は、安値が22円であり、ほぼ、8割引きを達成してしまっています。
つまり、この辺からトルコ円は上昇する可能性が高いということになります。
ただし、注意が必要!
若い方は日本の格言や慣用句をあまり信じない傾向にあると思います。
それどころか、上司が慣用句や格言を用いて説教をしても最近は理解できないような傾向があるそうです。
昔から使われている言葉は、なぜその言葉が現代社会でも残っているかといえば、その言葉が有用だから残っているのです。
半値、八掛け、五割引の次にご紹介したいのは
底値100日
という、江戸時代から伝わる、相場格言です。
要するに底を打った銘柄というのは、だいたい100日間の期間を経て立ち上がってくるという意味になります。
ここで考えていただきたいのは、この100日というのは何を指しているのか、ということです。
つまり1年365日を指しているのか、それともマーケットが開く年間250日を指すのかといことです。
普通の暦でいけば、100日というのは3か月程度になりますが、営業日数でいえば1か月の営業日数が22日くらいになるので、5か月くらい、ということになります。
つまり、歴史的な安値に達しているトルコ円と認識をしても慌てて買う必要がない、ということです。
要するに、売っても、売っても下がらないような状態を確認する状態を相場の世界では「底練り(そこねり)」と言いますが、この期間に安値を突き抜けて、トレンドを形成しなければ買いになるよ、と私は言いたいのです。
プロの見方
ここからはかなり難しい話になりますので、理解できない方は結構いらっしゃると思いますので、理解できなくてもいい、という感じでお読みください。
基本的には、現在のマーケットというのはクレジットで成り立っています。
クレジットというのは信用になるのですが、要するに借金のことです。
借金で重要なことは金利であって、この金利が昨年までは非常な低金利でした。
特に、日米欧では。
その代わりにトルコなどの新興国などの金利は反対に高いのです。
ところが、今年の年初、ないしは去年のFRBのQEの完全停止によって、アメリカの金利が上昇に転じたのです。
みなさんはいつつぶれるかわからないような国で預金をするのと、アメリカのようにたぶんつぶれる可能性が少ない国、どちらで預金をするのかという問題です。
いくらトルコのように、金利が16パーセントあっても、つぶれてお金が却って来ないような国ではみなさん、貯金したくないのです。
そこにアメリカの金利がどんどん上昇をしてきたのです。
みなさん、一斉に、トルコに預けていたお金をアメリカの銀行にお金を移動させているのです。
それが、今回のトルコ安の背景になります。
では、前提条件を考えてください。
みなさんが預金を移動させる条件というのは今後もアメリカの金利が上昇する、という前提条件です。
結論からいえば、今年のアメリカの金利はおそらく、それほど上昇しないでしょう。
理由はもっと難しい話になりますのでオイオイお話しできれば、していきたいと思います。
まとめ
トルコ円は、値幅的には安値の極致まで来ていますが、そこからは100日間、底値固めをしないと安心して買うことができない、というのが筆者の相場観になります。
しかし、一方で、このトルコ安を招いた原因がアメリカの金利上昇になります。
アメリカの長期金利が上昇したことによって、トルコからアメリカへのレパトリが起こっているのが原因というのが経済学の一般的な見方になります。
おそらく今後、アメリカの金利はある理由によって、それほどは上昇をしません。
ところが、投資家はこれからもアメリカの金利は上昇するだろう、という前提条件でトルコからお金を引き出し、アメリカにお金を移しているのです。
この行為が、ある時点で金利が大して上昇しないということに気づいたときに、トルコリラが再び買われるときになるということです。
その日柄は5月に安値を出しているのですから、3か月目以降、つまり8月以降になり、半年後になる可能性もあるのです。
個人的には9月から上昇をすると思っています。
歴史的な安値ですが、慌てて買う必要などない、と考えています。